タクシー話

24歳で脱サラしてタクシー運転手になった話16 ちょっと気になる、お金の話

「で、結局どのくらい貰ってたの?」

 

辞めた仕事に対しては、デリケートな質問も容赦なく浴びせてれます。

友人にやたらと聞かれました。

 

でも、確かに気になりますよね。
タクシーの給料はどのくらいなのかって。

今回は、そんなお金の話です。

 

と、話を始める前に。

 

これからお話しするのは、あくまでも2003年〜2007年くらいのこと。さらには都内の大手タクシー会社での話。

会社も社会も、現在とは色々違う部分もあると思われますので私個人の『ただの思い出話』としてお楽しみください。

では、はじまりはじまりー。

 

 

タクシーでいくら稼ぎたい?

 

「で、いくら欲しいんだ??」

 

配属初日。

私を指導することになった榎戸班長がタバコを咥えながら聞いてきた。

 

「うーん、手取り30万、、、くらいあれば」

 

特に収入のことなどは考えていなかったため、私はなんとなくの数字を答えてみた。

それでもサラリーマン時代に比べれば、10万円以上も多い数字。
24歳の自分にとっては十分なのである。

なんなら少し言い過ぎたくらい。
もう少し控えめに言った方がよかったかな?

 

しかし榎戸班長はニヤリと笑って、こう言った。

 

「なんだー?そんなもんか。教え甲斐の無い奴だなぁ」

 

「え??そうなんですか?」

 

「手取り30万なんか楽勝だよ。独身か?」

 

「はい」

 

「まあ、独身ならいっか。よし分かった。手取り30万のやり方で教えてやる。そんでいつか、結婚か借金でもしたら、また他のやり方を教えるからな」

 

これを聞いた私。

呆気にとられると共に。

 

「おー!やった!手取り30万だって!嬉しい!」

 

などと、心の中でガッツポーズ。
単純な若者である。

 

稼ぐためには戦略が必要!

 

榎戸班長の指導は、とても繊細なものだった。

 

朝9時には、大手町のこのビルに着くようにしろ。

昼休み終わりに移動を始めるビジネスマンを狙って、12:30からこの通りを回ってろ。

行きたい場所にはお客さんに連れて行って貰え。

夜は銀座。徹底的に銀座。狭い路地、一本一本に特徴があるから上手く流せ。

今日はこのホテルで◯◯薬品のパーティーがある。羽田空港に行く医者が山ほどいるぞ。

 

などなど。

 

漠然とした指導ではなく、ピンポイントで教えてくれた。

弟子でありながらライバルでもあるはずなのに、どんな情報でも全て教えてくれた。

もちろんそれは稼ぐためのテクニックだけでなく、稼げるタクシー運転手としての姿勢を示してくれているということも理解出来た。

 

稼ぐ技術どころか主要駅や大通りも分からない私。
アドバイスを書き込んだ地図を見ながら言われたことを素直過ぎるくらいに遂行していった。

すると間も無くして、私は手取り30万を超える給料を手にしていた。

 

サボりながら売り上げキープ

 

多くて1ヶ月に13乗務。
1日の売上6万円目標。

6万円×13乗務=1ヶ月売上78万円。

このうち歩合給含めて約52%が給料となる。
ということは、

売上78万円×52%=405600円。

405600円支給から、厚生年金やら社会保険やら色々引かれて。

 

手元に残るのは32万〜33万といったところだったと思う。

 

ちなみに年3度の賞与も売上からの積み立て。
それがこの52%に含まれていたかどうかは忘れた。
驚くほど給料には関心がなかったから。

 

始めて3ヶ月経った頃には、もうコンスタントにこのくらいの数字は残せるようになっていた。

 

「教え甲斐のない奴」

榎戸班長の言葉が脳裏にチラつくこともあったが、そこはまだまだ若い私。

 

「このくらいなら楽チンだな」

 

私の悪い癖。
サボりぐせの発動である。

 

「いかにサボりながら売上を上げるか」

 

これに挑むようになっていた。

 

運転手を始めて1年くらいは、必死こいて走って乗せてを繰り返していた。

朝6:30〜夜中3:30までの営業で、お客さんを乗せる回数は40回〜50回というところ。

2年目以降は、売上をキープしつつ営業回数を減らすことを心がけた。
いわゆる『客単価』を上げるための戦略。

 

などと言えば聞こえもいいが。

要するに「もっとサボりながら仕事したい。その上で1日6万程度なら可能なはず」ってこと。

会社としては「お前もっとちゃんとやれよ」でしかない迷惑な案件。

ただ、売上的には文句は言われることのない金額なので大丈夫(偉そうに出来るほどでもない)

 

結果、私の営業回数は1年目の半分くらいになり。
1日でお客さんを乗せる回数は20回程度に減少。

おかげで乗務中は昼寝とゲームとmixi三昧。
ニンテンドーDSのゲームソフトを次から次へとクリアしまくっていた。

それでいて売上はやはり6万円平均をキープ。

「あー、楽な仕事だなー」

冗談でもなんでもなくそう思っていた。
もうこの時の私には、向上心のカケラもない。

と、この先クソみたいな私がどうなったかは、また別の話。

 

客単価を上げよう

 

はい!というわけで、

客単価。

これが大事なんですねぇ。

 

1日に50回乗せて売上6万円ということは。

60000円÷50回=1200円。

客単価1200円ということです。

 

では、20回ではどうか。

60000円÷20回=3000円。

客単価3000円。

 

はい。
もちろん2.5倍です。

そんな操作が出来るのか?って話ですけど。
わりと出来ます。
乗せるお客さんを選べば。

でももちろん、毎回そんな金額のお客さんばかりを乗せるわけではないですからね。
ワンメーターの方もいらっしゃいます。

 

ただ、本番はあくまで夜ですから。
銀座での長距離狙い。

銀座→横浜とか、銀座→千葉とか、銀座→埼玉みたいな。

一撃で1万〜2万〜3万というのを常に狙っていきますので。

この辺とのバランスで、客単価は出来上がります。

 

なのでお昼は、言ってしまえば夜へ向けての土台作りです。

大手町→新宿
大手町→品川
丸の内→恵比寿
品川→新宿

などなど。

こんな感じの2000円〜3000円移動を狙っていけば、自然と客単価は上がっていくというもの。

オフィス街 to オフィス街。

ワンメーターの確率を低くする。

 

そして距離が長いということは、実車時間も長いということですから。
自ずと営業回数も減ってくる。

初乗りのお客さんを物凄い勢いで乗り降りさせて回数で稼ぐというスタイルは不可能になるのであります。

 

実は色々考えてる

 

と、とりあえずはこんな感じですかね。

 

ちなみに、営業回数20回で売上6万円はサボり過ぎです。

この後、榎戸師匠に怒られますから安心してください。

師匠は15回で7万〜8万とかやってました。

 

この辺が危機感の無さなんですよね。

「結婚か借金したらまた教えてやる」というのが如実に現れる。

1日フリーで自由に仕事をするというのは、なかなか難しいものなのです。

特に私は、自分に激甘ですからね。

 

とりあえずタクシー運転手も、行き当たりばったりやっているようで実は色々考えたりもしてるんだよ。

ってことがご理解いただければ、今回のお話はこれで終わりです。

ご静聴ありがとうございました。

もちろん、何も考えずに駅前で寝てる人も多いですけどね(そういう人は稼げない)

 

最後になりますが。
あくまでも10年〜15年前の話です。
私が辞めた後は、かなり厳しくなったとか。

なのでこれを読んで「寝ながら手取り30万なんか楽チンじゃん」と思うのは、かなり危険です。

一切の責任を負いませんので、あしからず。

 

それではでは、こぼりたつやでした。

 

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