タクシー話

24歳で脱サラしてタクシー運転手になった話13 怒りの首都高、かっ飛ばす!の巻

どうも。
元タクシー運転手ブロガー、こぼりたつやです。

 

過去に書いたタクシーエピソードを眺めつつ。

「どれを出そうかなぁ」なんて選んでいる時間が楽しくて仕方ないのです。

 

今回はですね、一部ちょこっとだけ修正を致しまして。ほぼ当時の原文そのままで読んでいただこうかと思ってます。

スピード感が大事なエピソード。
そして、我ながらそれがよく書けている。

 

7年前のおれ、よくやった。

 

なんか若さ丸出しの生意気で青臭い文章ですが、是非読んでやってください。

あと今回に関しましては、現在のブログで使っている装飾や技法的なものは一切使いません。

無機質な活字のみ、ぶっ通し。

 

では、どうぞ。

 

 

 

 

恵比寿で乗せた、外国人ファミリー。

両親・幼児・赤ん坊。
見ているだけで微笑ましくなるような4人家族。

片言の日本語で行き先を告げられ、車を走らせていた。

 

目的地は、麻布辺りの高級マンション。

 

前にもどこかで書いたかもしれないが。
ボクは高級住宅街が苦手だ。

「早いとこ立ち去りたい」

そのエリアにいるだけで、そんな気持ちにさせられる。

この家族を降ろしたら、回送でいつものエリアに戻ろう。

 

 

ん!?

 

 

 

 

くさい!!!

 

 

 

 

 

超くせえじゃねえか!なんだこれ!!!

 

 

 

この臭いは、確実にアレだ。

 

アラレちゃんが棒に刺して走り回るやつだ。

 

 

 

「オーウ」

「オーマイゴーッド」

「バッドスメール」

 

 

 

後部座席が騒然としている。

 

犯人は言わずもがな、ベイビーだ。

 

 

 

「キャハ!キャハハ!!イエス!!!」

 

兄の幼児が嬉しそうに大はしゃぎだ。

どうやら子供のうんこ好きは、万国共通みたいである。

こいつも道に落ちている犬の糞を投げて遊ぶ様な、ワールドスタンダードな小学生男子になるに違いない。

 

もっとも、麻布にカチカチに干からびた犬の糞が落ちているかは疑問だが。

 

 

 

 

「フォーーーーー!!!」

 

 

 

 

長男が感極まって、吠えた。

 

 

 

「シャラップ!!金髪ボーイ!!!そんなにうんこが好きなら、大人の全力の作品を見せてやろうか!」

と、怒鳴ろうとした瞬間。

 

マザーの雷が落ちて、爆泣き。

 

兄の泣き声と弟のうんこ臭が漂う車内。

なかなかの地獄っぷりだが、両方子供という事でまだ納得できた。面倒な大人よりは微笑ましさがある。

 

まあ、してしまったものは仕方がない。
よくあることだ。

でも大事なのは、これから先。
降ろした後の営業に差し支える。

 

まあ元々この高級住宅街ではお客さんを探す気もなく、降ろしたあとは回送にするつもりだったので。
全ての窓を全開にして空気を入れ換えれば何とかなるだろう。

 

いや、待てよ。

 

シートは大丈夫なのか??

 

マザーが抱っこしてるから大丈夫なはずだけど。

でも一応、確認しておかなければ。

 

 

そんな事を考えながら、ようやく目的地。

お金を払う姿も、どこか申し訳なさそう。

 

ただ、それにしてはお釣りをしっかりと全額受け取って降りて行った。

 

いやいや。いいんだけど。

 

 

全額受け取った。

 

 

いやいや。いいんだけど。

 

 

というわけで、さっきの換気プランの実行に移る。

表示板を回送にして、窓を全開。
人気のいない場所へ停車して、シートの臭いチェック。

さすがにシートに鼻を近づけるのは気が重い。

 

 

 

コツコツコツコツコツ

 

徐々に近づいてくる、足音。

 

 

 

 

 

やばい!!!

 

 

 

 

 

高級マンションから、スラッとした美人が出てきた。

 

その眼差しはしっかりとボクに向けられ、右手は上がっていた。

 

 

さすがにお断りするつもりだった。

 

 

恥ずかしいが、理由をきちんと話せば理解してくれるはず。

 

ましてや綺麗な女性。

なおさら悪臭漂う車になんか乗せられない。

 

 

ああ、それなのに。

 

 

 

・・・悪いのは、この女だ。

マンションから近づいてきた、この女。

 

事情を説明しようと、ボクは窓から顔を出した。

「あ、すいません」

という声を無視して、女はドアに手をかけた。

 

タクシーの後部ドアは、ご存じの通り自動。
手動で開けると、物凄く重く感じる。

しかし、その女。

そんな事お構いなしといった感じで、ドアを開けて。

ゴロゴロ転がせるキャリーバッグを車内に無造作に投げ込み、言い放った。

 

 

 

「羽田。急ぎで」

 

 

 

これまで散々、人をムカつかせる人間に出会ってきたが。

中でもトップクラスのムカつき度。

この言い方は、、、なかなか無い。

 

 

 

よし、わかった。

こんなクソ女にはクソの臭いがお似合いだ。
お前が勝手に乗ってきたんだからな。

 

 

などと思ったが、苦情でも言われた日にはさらにムカつく。

 

やっぱり事情を説明しておこう。

 

 

「あの、すみません。実はこの車・・・」

「急ぎって言いましたよね?早く出て下さい」

 

 

 

 

オッケー。

お前の気持ちはよーくわかった。

オレは忠告しようとしたんだからな。

お前が途中で遮って聞かなかったんだからな。

途中で臭いだの何だの難癖付けてきやがったら。

 

 

進退を賭けてでもキレてやる!

刺し違えてでも喧嘩してやるからな、この野郎!!

 

 

 

そしてこのクソ女。

幸か不幸か、乗り込んだ瞬間にタバコを吸いだした。

車内がタバコの臭いで充満する。

 

キャリーバッグを投げ込む。
運転手に偉そうに命令する。
断りなくタバコに火をつける。
経路指示も無く、すぐに携帯電話で下世話な話。

 

この一連の所作は、人としても赤点。

クソ女にはクソ車がお似合いだ。

 

 

そんなクソ車を操り、赤信号。

 

その時。

 

 

 

 

 

「ちょっと、ホントに急いでもらえます?間に合わないから」

 

 

 

 

電話口を押さえながら、明らかに苛立った口調で言った。

 

 

ムカつき度合いの臨界点を突破。
深く息を吸って気持ちを落ち着かせて、

「わかりました。多少荒くなりますけど、いいですね」

ボクは感情を失ったような声で返答した。

 

女は電話に戻っていて、返事はない。

 

 

 

プロをなめるなよ。

 

 

 

赤信号が青信号に変わった瞬間、アクセルを一番深くまで踏み込む。

一瞬車体が沈み込むような感覚から、一気にドンっという衝撃と共に急発進。

これは急ぎという名の荒い運転の幕開けを意味する。いわば意思表示。

 

するとボクの運転を歓迎するかのように、雨が降ってきた。

 

いいぞいいぞ、どんどん降れ!!

 

その雨で滑ってスリップの1つや2つでもお見舞いしてやれば、パフォーマンス的にも最高だ。

 

首都高2号線「天現寺インターチェンジ」入り口。

 

ETC搭載の車。

 

当然、100km近い加速で料金所に突入する。

 

道幅の狭さからの錯覚なのか、実際そうなのか。

首都高のETCバーは上がるタイミングが遅い。

 

日頃から、

「いかにスピードを落とさずETCバーに突入できるか」

という狂った遊びが大好きだったボクですら緊張を覚える。

 

実際に首都高100キロ突入はこれが初めてだった。

 

うおー!こえー!!

 

なんて気持ちとは裏腹に、冷静な顔でルームミラーを見る。

鏡に写った女は、完全に目をつぶって首をすくめた。

 

弾けるように、短い合流地点から本線へとなだれ込む。

 

首都高2号線は、元々交通量の多くない路線。

スピードを決して緩めることなく、少ない他車をオーバー過ぎる車線変更で次々と抜き去る。

 

とにかく無駄に、左右のハンドル操作をしてやる。

 

女は、大きな態度で座っていたはずだが。

いつの間にかドア上部の取っ手を握り、小さくなっていた。

 

そして、窓を開けた。

 

外は雨。

しかも高速。

それでも女は窓を開けた。

 

 

「へへ、やっと効いてきやがったか」

 

 

今となっては、うんこベイビーが愛おしい。

よくぞ爆弾を投下していってくれた。

 

「いいか。この悪臭も、この運転も。全ては貴様が望んだ事だぞ!クソ女!!うおりゃー!!」

 

怒りと恐怖と緊張感で、すっかりボクもおかしくなっていた。

ドライバーズハイとは、まさにこのこと。

 

そしてここで来た!

 

待望のスリップ!!

 

「キャッ!」

 

たまらず女が声を出した。

 

いいぜいいぜー。

ゾクゾクするぜー。

オレに偉そうにしたことを後悔しろ。

 

などと思ってはいたが、もちろんボクも声が出そうになった。
心臓が止まるかと思った。

もういやだ。
安全運転が恋しい。

 

でもとりあえず、今のスリップは謝っておこう。

あくまで普通を装う。

アクシデントに対してはフォローをしておいた方がいい。

 

「すみません、路面が濡れてまして。急いでますと、どうしても・・・」

「あ、いえ」

 

ついでに、こんなおちゃめな質問も。

 

「お時間どうですか?もうちょっと急げますけど?」

「あ、えっと。大丈夫です。ありがとうございます」

 

さっきまでのクソ偉そうな態度は、もうどこかに消え失せてしまっている。

 

とりあえずまあ、態度も変えてくれたみたいだし。

ボクはようやく、運転席側の窓も少しだけ開けてあげた。

これで車内の空気も流れるはず。

 

 

羽田空港のロビーに着くやいなや。

「すみません。おかげで間に合いました」

キャリーバッグを投げ込んで来た時の態度とは大違いのご様子。

 

1万円札を出して、慌ただしく降りていった。

 

「あ、お釣り・・・」

「取っといて下さいー」

 

そのままターミナルの中へ走って消えて行った。

 

 

 

・・・やり過ぎた、かな??

 

 

 

あの偉そうな態度はなんだったのだろう?

本当はいい人なのか???

いや、あんな態度をする人間はなかなかいない。

 

 

だって本当に本当にムカついたんだから。

 

様々な疑問が頭の中を交錯するが、

「まあ、間に合って感謝されたのなら」と自分に言い聞かせた。

 

あのファミリーを降ろしてから、実に20分程度しか経っていない。

確かにこれは早い。

本来なら、まだ換気をしている所だろう。

 

思い出したかのように、後部座席のシートに鼻を近づけてみた。

 

やっぱりほんのり、臭かった。

 

なんだか色々と複雑な思いを抱え、ボクは換気をしながら空港を後にした。

 

 

 

 

以上でーす。

 

辞めたからこそ書けるのかな。
現役なら炎上案件っぽいですね。

途中の「車内でタバコ」とか「ETCバーにスピードを出したまま突っ込む」とか。時代を感じさせる表記がありましたが。

これも全て2005年とかのお話ですので。
絶対に真似しないで下さいね。

 

その後の私、八王子料金所のETCバーに見事突っ込みましたので。

開かないんかーい!!と。

ふわっふわ素材のバーが上がる前に突破してしまったのです。

必ず徐行で通過しましょうね。

 

 

俗に言う「お客様は神様なのか問題」に近い出来事でした。

この女性の職業は容易に推測出来るもので、同じ接客・サービス業のはずなんですけどねぇ。

 

他にも何人か乗せましたけど。どうも、こういう人が多いというか。そんな印象。

 

うーん。

なので、飛行機に乗った際に俺もワガママ言ってみようかな。

なんて思うのですが。

 

でもそうするとまた、違う運転手さんにとばっちりが行きそうなのでやめておきます。

 

誰に対しても、偉そうになんかしてはいけないのです。

お互い良いことがないですからね。

 

そんなお話。

 

次回は→24歳で脱サラしてタクシー運転手になった話14 運転技術?の巻

 

それではでは、こぼりたつやでした。