話のネタ

『行きつく先は、ハンバーグ』3000文字駄文チャレンジ 第1弾

どんな場面においても『即断即決』というポリシーを貫き通して来たつもり。

 

・24歳で会社を辞めて、タクシー運転手に転職したこと

・29歳で包丁すらまともに握ったことが無いのに、居酒屋に転職したこと

・33歳で独立して、まるでやったことのない焼肉屋を始めたこと

 

普通なら悩んで悩んで悩みまくるような決断も、瞬間的に下してきた自負はある。

 

だがしかし。

そんな私にも『天敵』は存在する。

 

 

ファミレスの注文だ。

 

 

お子様からお年寄りまで。
幅広い層の支持を集め、お腹も心も満足させるメニュー構成は実に見事。

和洋中、おつまみ、スイーツ、ドリンクバーにアルコール。まさに百花繚乱多種多様。

 

『無いものは無い』

と言えるほどの充実振り。

 

これが厄介なのである。

 

私は食に関しては一切の妥協を許さない人間であり、

「昼飯はこれで済ませるか」

という軽率な気持ちで食事を決めることが心の底から嫌いなのだ。

反吐が出る。

 

かといって海原雄山のような『美食家』なのかと言えば、そうでもない。

 

むしろ真逆。

ジャンクフードこそ至高。
カップ麺こそ究極。

 

要は、ただぼんやりと何の意思もなく食事のメニューを決めることが許せないのである。

 

だから私は、日替わりランチを一度も頼んだことが無い。
日替わりランチは店の都合だ。

毎日のように通う定食屋やファミレスならまだしも。

なぜ月に数回、年に数回の貴重な機会に『日替わり』を頼まなければならないのか。

 

もちろん食費を抑えたいのであれば、定食屋やファミレスに固執することはない。

立ち食いそば、ファストフード、コンビニ、パン屋、駄菓子屋。

駄菓子屋でビッグカツ片手にブタメンなんて、最高の贅沢だとは思わないか?

100円でお釣りが来る。

 

 

しっかりとした意思を持って食事と向き合おうという気持ちがあるならば。

自分らしく、そして自由に羽ばたける舞台など、いくらでもあるはずなのだ。

 

 

 

ライト兄弟は空を飛んだ。

 

 

その瞬間、人類は鳥になった。

私は鳥だ。

 

だから、羽ばたく。

 

 

ん?

なんだ??

 

「ママ友会で場所が決まっちゃってるから、しょうがないの」

 

なるほど。

それは、、、仕方ない。
日替わりランチを堪能してくれ。

 

私は自分の想像が及ばない範疇のことに関してはオールOKという、事なかれ主義の権化として生きることにしている。

 

大丈夫だ。
日替わりスープバーも、私が取りに行こう。

 

 

 

この日、同じテーブルに着いたのは5人。

私を含む男3人と、女性が2人。
知り合って20年になる、大学時代の友人と後輩だ。

 

メンバー紹介をしておこう。

 

田中たなお→麺類を選びがち

佐藤さとし→決まったものばかり食べる

こぼりたつや(私)→優柔不断

鈴木すずみ→少食のファンタジスタ

山田やまこ→グルメなおしゃれ女子

 

以上の5人。

 

私は必ず、同じテーブルに座った面子で『メニューを見て迷うことの出来る時間』というものを算出する。

もちろん正確にどのくらいとは言えないが。

目安として『ゆっくり悩める』か『そんなに悩む時間は無い』ということくらいは分かる。

 

迷える時間がある=他のメンバーも長考型
迷える時間が無い=他のメンバーは即決型

 

今日のメンバーはどうかというと・・・

 

かなり早い。

 

まずは男2人。

田中たなお。

こいつは麺類しか食べない。
本当にどこへ行っても麺類ばかり頼む。

もちろん私も麺類には目がないが、それにしても『過ぎる』のだ。

先月も皆で『かつ丼が超有名な中華屋』という、一見トリッキーだけど実は物凄い説得力を持つ【専門外商品バカ売れパターン】の有名店に足を運んだのだが。

 

その際もたった1人、

「おれ、チャーシュー麺」

と言ってのけた。

 

しかも開店30分前から並んだにも関わらず、だ。

 

 

なぜ並んだ。

 

 

ていうか、何しに来た。

 

 

私は思わず「嘘だろ!?」と叫びそうになったが、それはそれでお店に失礼なので我慢した。

そんなやつがファミレスの注文で迷うわけがないのだ。

せいぜいラーメンかうどんかそばかで迷うくらいなもの。過去のデータから、パスタは無い。

というわけで、こいつから生まれるロスタイムは期待出来ない。

 

 

次、佐藤さとし。

こいつに限ってはメニューすら開かない可能性がある。

本当に決まったものしか頼まないからだ。

この店ならあれ。
あの店ならこれ。
初めての店でも、あれかこれ。無ければそれ。
大抵ある。

 

そしてこのファミレスならば、とんかつ膳。

恐らくこれは間違いない。

全くどうかしてる。

 

そのくせ、エロDVDだけは決めきれずに10本とか借りやがる。

しかも返し忘れて延滞金発生。

その昔【10本×300円×10日=30000円】という、桁外れの延滞料金を払っていたこともある。

 

なのでもちろん、こいつから生まれるロスタイムはゼロ。ロスタイムどころか『正規の迷い時間』すら短縮しやがる、いまいましい存在。

 

 

次、鈴木すずみ。

少食のファンタジスタこと、すずみ。

こいつはとにかく食べるのが遅い。
そして食べる量も少ない。
少ないけど遅い。

でも、たくさん頼みたがる。

 

過去に男でも完食に苦労する某どんぶり屋へ行った際には、周りの反対を押し切って『普通』を頼んでいた。

 

 

『ミニ』があるのに。

 

 

「ミニでも茶碗大盛りはあるよ」

「すずみはミニでいいんじゃない?」

「ううん、私も普通が食べたい」

 

あんなに残された料理を見るのは、恐らく最初で最後だと思う。

一回厨房に下げてスプーンで形を整えたら、またそのまま『普通』として出せるくらいに残っていた。

これこそファンタジスタたる所以。

 

そんな鈴木すずみ。

やはり注文には時間がかかるタイプである。
このメンバーでは、一番の心の拠り所だ。

大幅なロスタイムが期待できる。

 

 

そして最後。
おしゃれなグルメ女子こと、山田やまこ。

とにかく食べるのが好き。
あらゆるジャンルの店を知っていて、食が目当てで日本国中飛び回る。

そういった意味では、食に関しては私の最大の理解者。
昔からよく『食』について語り合ったり、実際に足を運んでみたりもしていたのだが。

 

やまこは決めるのが早い。

 

正確には、二択に持ち込むまでが早いのだ。

うーんと迷っている姿はよく見かけるのだが、必ず早い段階で決勝戦まで絞り込んでいる。

なのでロスタイムは皆無。
皆が決めるタイミングで必ず決まる。

 

まとめると。

田中→麺類確定
佐藤→とんかつ膳確定
すずみ→恐らく遅い
やまこ→絞り込みからの二択

やはり頼みの綱は、少食のファンタジスタこと鈴木すずみ。

こいつしかいない。

 

 

席に着き。
荷物を置き、上着を脱ぐ。

いざ、勝負の時。

もちろん私はメニューを真っ先に手に取り。

 

とんかつ膳に内定を出しているであろう、佐藤にパス。

佐藤は人がいい。

なので例え決まっていたとしても、メニューを渡されたからには一通り目を通すはず。

だからそれを利用して時間を稼ぐ。

 

「おお、ありがとう」

 

律儀にお礼を言いながら、やはりメニューに目を通す。

そして私はすぐさまその間に、すずみとやまこがキャピキャピしながら開いているページを凝視。

まず絞れ。

このページに頼むべきものがあるのか。
それとも無いのか。

 

・・・無い。

 

ここには無い。
さすがは、おしゃれ女子。
見るページもおしゃれだ。

グラタンやドリアに用は無い。

 

 

麺類田中は何してる?

 

 

こいつ、、、

 

 

見てねえ!

 

 

メニューすら見てねえ!!

 

なぜ見ない??

決まっているのか??

 

と、その時。

 

田中「チャーシュー麺ってあるんだっけ?」

佐藤「うーん、、、あ!あるよ!」

田中「じゃあそれ」

 

 

 

田中!!

 

 

 

問診のみ!!

 

 

お前はバカか!!!

早すぎるにもほどがある!!

 

見ろ!
せめてメニューで写真見ろ!!

 

うどんもあるぞ!?
そばもあるぞ!?

てかまたチャーシュー麺かよ!

 

佐藤「じゃあ、俺はとんかつ膳」

 

 

佐藤!!!

じゃあ、じゃねえ!!

どうせ最初からそうだっただろ!!

なんなら車の中で言ってた!!
聞こえたよ!おれ、聞こえてたよ!

 

 

マズい。

おれ、、、何も決まってない。

決まってないどころか、考えてもいねえ。

ハッキリしてるのが、グラタンとドリアは選ばないということだけ。

でもそんなもんはメニューを開かずとも決まっていたこと。

 

すなわち・・・

 

この間・・・

 

その場で佇んでいただけ・・・!

 

 

田中と佐藤はもうすでにゴールテープを切っている。

恐らく2択に持ち込んでいるであろう、やまこもゴール寸前。

俺は未だスタート地点に立っている。

 

ていうか、、、ちょっと待て。

 

おれはまだ、、、

 

メニューすら見てない・・・!

 

しかも佐藤、あいつ!!

メニューを戻しやがった!!!

おれ、、、まだ見てなかったのに!

 

そうだ。

すずみは?

すずみはどうしてる!?

まだ決めかねているはず。

 

2択に持ち込んだやまこと一緒に悩んでいると見せかけて、すずみは何も決まってないはず!

 

 

 

スマホ・・・!?

 

 

スマホをいじっている・・・だと!?

 

おい!すずみ!
それはどういうことだ?

決まったのか?

ゴールテープを切ったからこそのスマホか?

 

それともあれか?

『早く決めないといけない雰囲気』に、真っ向から立ち向かっている姿勢の表れなのか?

それならいいぞ。

もっとスマホをいじってろ。

 

その間、おれがメニューを見て一気に決め・・

 

 

「こぼりさん、決まりました??」

 

 

 

 

すずみ??

 

どうして、お前が・・・?

 

 

「え?すずみは?決まったの??」

「はい。やまこと同じので」

「え??同じ??てか、やまこも早くない?」

「はい!今日は外から決めてたんです!期間限定メニューが美味しそうだったので!」

「2択は??」

「2択??なんですか?それ」

「いや、、、こっちの話。なんでもない」

 

 

期間限定メニュー。

 

『期間限定メニューを安易に選ぶのは、店側の操り人形』

 

日替わりランチ理論と似た部分は多いのだが。

グルメ女子・やまこが選ぶ分には文句は言えない。
その辺もきっちりとわきまえての選択。

 

問題は、すずこ。

さすがファンタジスタ。

普通盛りを普通盛りのまま残せるくらいなのだから。

親友の期間限定メニューに乗っかることくらいはなんてことない。

 

 

くそっ!!!

完全なる誤算!!!

 

これではロスタイムどころか、正規の選ぶ時間自体がほとんど無い!

まずい、、、早く決めないと!!

と、その時。

 

 

田中「そんじゃ押すねー」

 

 

キンコーーーン

 

 

 

 

この、、、、

 

 

チャーシュー野郎があぁぁぁ!!

 

 

「あれ?こぼりさん、大丈夫なんですか?」

「うん、大丈夫。決めてたからね・・・」

 

精一杯の強がりを見せたその声はとても細く、弱々しく、そして悲しい。

 

「チャーシュー麺で。大盛りって出来ますか?」

「とんかつ膳、ご飯大盛りで」

「うにのクリームパスタ2つ下さい!」

「えーっと、、、ハンバーグの目玉焼きのやつ。ライスでお願いします」

 

 

空虚。

なんだこの、圧倒的な空虚感。

 

ハンバーグは好きだ。
大好きだ。

しかしなぜだろう、この虚しさ。

 

これはあれだ。

意図しないバーグだからだ。

 

言わば、自動的なバーグ。

オートマチックバーグ。

 

私から掴みに行ったバーグではない。

 

大罪。

そして、自責。

 

ハンバーグに謝りたい。
全てのハンバーグに、こんな形になってしまい申し訳ないと謝りたい!

ハンバーグよ、、、すまん!!

 

 

ソーリーバーグ!!!

 

 

しかし、バーグとは皮肉なものだ。

とても美味しい。

こんなクズのような私にすら、いつもと変わらぬ美味しさを与えてくれる。

決して私が心から望んだものでは無いというのに、この目の前のバーグは懸命に仕事をしてくれているのだ。

 

グッドジョブバーグ。

 

美味しいハンバーグ。

 

デリシャスバーグ。

 

「あー、美味しかった。やっぱりここのとんかつ膳は最高だなー」

「パスタ美味しかったね!」

「ねー!」

「ていうかお前さあ、、、」

「うん?」

 

 

「ファミレス、いつもハンバーグじゃね??」

 

 

「え!?いや、そんなことは・・・」

 

「あー!あたしも思ったー!!」

「こぼりさんって一番悩むのに、最後は絶対ハンバーグになるんだよねー!」

「そうそう!」

「おれのとんかつ膳と一緒じゃん」

「たまには違うもん食えよ。チャーシュー麺、美味かったぜ」

「う、うん。今度は違うの、、、食べようかな」

 

 

恥ずかしい。

こんな恥ずかしいことがあるなんて。

迷い癖を見抜かれていたのは、まだいいとして。

 

バーグ癖。

 

自覚症状すら無かったバーグ癖を指摘されるなんて。

しかも麺類バカと馬鹿の一つ覚えバカに。

なんて恥ずかし・・・

 

いや。

 

恥ずかしくない。

胸を張れ。

 

「いつもハンバーグ」という批判など気にせず、胸を張ってオーダーしよう。

 

迷うかもしれない。
目移りするかもしれない。
たまには浮気をするかもしれない。

 

しかし私は、ハンバーグが好きだ。

 

そこにハンバーグがいる限り、私は戻ってくる。

例え道を外れようと、必ず戻る。

カムバックバーグ。

 

何度でも、、、

何度でも、、、

 

ありがとう、ハンバーグ。

サンキューバーグ。

 

 

迷ったら 自信を持って ハンバーグ

 

 

全てのバーグフリークに。

そして。

全ての優柔不断に、幸あれ。